第22回学術大会のお知らせ

下記のプログラムに基づき、完全オンライン形式(zoom)で学術大会を開催いたします。

日時:2025年11月30日(日) 14:30~17:00 
場所:zoom(*URLは会員および非会員の申込者のみに告知)

非会員の方も参加できます。
参加を希望される方は事務局( jsjsnews(アットマーク)gmail.com )までその旨ご連絡ください。

プログラム

14:30 開会のあいさつ

14:35~15:20 志田雅宏(静岡県立大学)
強制改宗と論争文学―プロファイト・ドゥランとハイーム・イブン・ムーサを例に

本発表では、1391年以降のスペイン・ユダヤ社会におけるキリスト教への大勢の強制改宗のなかで、ユダヤ人による反キリスト教論争文学がどのような役割をはたしたかを考察する。具体的には、1390年代のプロファイト・ドゥランによる著作(『汝の父祖のごとくであるなかれ』および『異教徒の恥辱』)と、1456年のハイーム・イブン・ムーサによる著作(『盾と槍』)を比較する。この比較によって、改宗者に対するユダヤ社会の認識の変化やキリスト教を論駁する目的、論争家たちのキリスト教観およびユダヤ教観などを検討する。
(※研究発表は発表30分+質疑応答15分。以下同)

15:25~16:10 保井啓志(同志社大学)
ラヴ・クックにおける動物倫理と菜食主義の解釈

アブラハム・イツハク・ハコヘン・クック(ラヴ・クック)はユダヤ教ラビの立場から1900年代という早い時期から菜食主義と動物倫理の擁護を訴えた人物であり、その論考は、後年に『菜食主義と平和のヴィジョン』としてまとめられている。本報告では、この書籍をもとに、ラヴ・クックの思想において、動物倫理や菜食主義がユダヤ教の範囲内でどのように解釈されていたのかを、その世俗的な動物倫理との対比を踏まえながら論じたい。

16:15~17:00 コヘン シラ(同志社大学)
ヘブライ文学と日本文学におけるキリスト教と暴力:S.Y.アグノンと芥川龍之介を例として

20世紀初頭、ヘブライ文学と日本文学は西洋文化と文学の影響のもとで発展していった。しかし、そのような文化的影響はそう単純に受け入れられていたわけでは無い。その中で、ヘブライ文学と日本文学両方にキリスト教を暴力的に描写する作品が見られていた。1943年、当時ヘブライ文学の第一人者であったS.Y.アグノンが吸血鬼的なキリスト教女性がユダヤ人の行ション人を殺そうとする「貴婦人と行商人」という短編小説を発表した。また、1917年から1927年にかけて、小説家芥川龍之介は日本のキリシタン時代(1549年〜1644年)を舞台とする短編小説、いわゆるキリシタン物を数十編発表した。そのうちの多くの作品はキリスト教徒の弾圧を題材とし、キリスト教を消極的に描写している。この二人の小説家のこのようなキリスト教の描写にはどういう意図があったのか。この発表では、アグノンと芥川がキリスト教とそれぞれユダヤ人及び日本人との歴史的な関係を暴力を軸として捉え直すこと度、自らの時代の西洋に対する不安を表現していたと論じ、さらに、このことが当時の文学情勢について何を示してくれるのかを問う。

『ユダヤ・イスラエル研究』第40号の投稿申し込みを受け付けます

会誌『ユダヤ・イスラエル研究』第40号への投稿を募集いたします。
ご希望の方は2025年12月末までに志田雅宏宛てにメールをお送りください。
masahiroshida222(アットマーク)gmail.com
件名に「論文」等の種別と仮題を記載してください。
編集委員会にて申し込みを受理した後、詳しい投稿規定をお送りいたします。

原稿の種別と基本的な枚数(注と図表を含む。400字詰換算)は下記のとおりです。
論文:50枚
研究ノート、学会動向、旅行記など:30枚
書評:10~20枚
新刊紹介:4枚以内
*書評と新刊紹介については、編集委員会の方から執筆を依頼する場合がございます。
*2025年度のシンポジウム論文の執筆は別途依頼しております。依頼を受諾してくださった方々も、上記の原稿の投稿が可能です。

第40号は2026年3月末原稿締切、2026年12月刊行の予定です。
なお、掲載された論文は学術論文データベース(J-Stage)で公開の予定ですので、ご了承ください。
原稿の採否については査読のうえ編集委員会で決定いたします。

第22回学術大会発表者募集

第22回学術大会の発表者を募集いたします。今年度はシンポジウムを10月4日に開催する関係で、学術大会は11月30日(日)午後に完全オンラインでの開催となります。
*例年より一か月遅れでの開催となりますのでご注意ください。

発表ご希望の方は、仮題と200字程度の要旨を2025年9月30日(火)までに事務局(jsjsnews(アットマーク)gmail.com)宛にメールでお送りください。
件名に「日本ユダヤ学会学術大会発表希望」と記載してください。
*受領のさいは、こちらから返信をいたします。(この返信をもって発表を認めるものではないのでご注意ください)

発表時間は発表者数によりますが、25~30分の予定です。発表をお願いするかどうかの決定は理事会にご一任いただき、結果は10月31日までにお知らせいたします。
非会員の方も会員のご紹介があれば発表できますので、お心当たりの方がいらっしゃればお声をかけてくださるようお願いいたします。

2025年度シンポジウムのお知らせ

YIVOユダヤ研究所設立100周年記念シンポジウム
2025年10月4日(土)13:00~17:00 場所:東京理科大学 神楽坂キャンパス
主催:日本ユダヤ学会 
協力:Martynas Mažvydasリトアニア国立図書館、リトアニア文化研究所、駐日リトアニア大使館

開催方法:対面・オンライン併用。オンラインでのご参加をご希望の方は下記のフォームからお申し込みください。
https://x.gd/GPPLm
使用言語:特別講演・質疑応答のみ英語(通訳なし。ペーパーの事前共有あり)。その他は日本語。

趣旨:
現在、ニューヨークに拠点をおくYIVOユダヤ研究所(YIVO Institute for Jewish Research)は、1925年にヴィリニュス(当時ポーランド領ヴィルノ)で設立された、中東欧イディッシュ語圏のユダヤ人社会ならびに同地にルーツをもつ世界各地のユダヤ人コミュニティにかんする研究機関です。イディッシュ語やヘブライ語のみならず多言語の史資料を集積し、研究対象とされる地域も中東欧、ロシア、南北アメリカなど多地域にわたります。YIVOの可能性は、ユダヤ研究のみならず、ユダヤ人を内包する地域社会の研究へも開かれているといえます。
本シンポジウムは、YIVO設立100周年を記念し、草創期から第二次世界大戦中の危機の時代、そして現代までのYIVOの歴史を振り返ります。特別講演者として、Martynas Mažvydasリトアニア国立図書館よりララ・レンペルティエネ博士をお招きし、これまで知られることの少なかったリトアニア現地の文脈からYIVOの歴史の一端をご講演いただきます。
ユダヤ研究者はもちろんのこと、YIVOが射程とする諸地域にご関心をお持ちの方々の幅広いご参加を歓迎いたします。
講演者の招待においては駐日リトアニア大使館の多大な協力を得ました。記して感謝申し上げます。

13:00–13:05 開会の辞・趣旨説明:市川裕(本会理事長・東京大学名誉教授)
13:05–13:35 西村木綿(名古屋外国語大学講師)
「YIVOは何を目指したか――設立から両大戦間期まで」
13:35–14:35 特別講演:ララ・レンペルティエネ(リトアニア国立図書館ユダヤ研究センター、博士)
「最終章――ソ連占領期リトアニアにおけるYIVO(1940〜1941年)」 
14:35–14:45 休憩
14:45–15:15 高尾千津子(元東京医科歯科大学教授)
「ニューヨークのYIVOとソ連ユダヤ史関係史料」
15:15–16:00 コメント:重松尚(日本学術振興会特別研究員CPD、ヴィータウタス・マグヌス大学提携准教授)・青木良華(本会会員)・荒井敬史(本会会員、博士)
16:00–16:15 休憩
16:15–17:00 コメントへの応答・質疑応答

【特別講演要旨】
ララ・レンペルティエネ「最終章――ソ連占領期リトアニアにおけるYIVO(1940〜1941年)」

1925年にヴィリニュスに設立されたYIVO研究所と、現在、YIVO Institute for Jewish Researchとしてニューヨークにおいて続くその歴史、そして所蔵される史料の運命については、多くの論文、書籍、回想、辞典で、また、近年ではいくつかのモノグラフにおいて論じられている。しかしYIVOをめぐる主題は尽きるには程遠い。それはYIVOの文化的達成の広大さのみならず、現在もなお、YIVOと密接な結びつきのある新しい文書が発見され続けていることによる。最近ではYIVOに関連する数千ページにわたる文書がヴィリニュスのいくつかの研究所で再発見された。
本報告が焦点を当てるのは、しかし、長年にわたりアクセス自体は可能だった文書である。これらはYIVOについての我々の知識を相当に押し広げるものであるが、これまでの研究において十分に活用されてこなかった。その文書の大半は現在リトアニアにあり、主にリトアニア国立文書館に保管されている。これらは1940年から41年にかけて、すなわちヴィリニュスがソ連の支配下にあった時期のYIVO研究所と関連する文書であり、ナチ占領下で略奪・破壊される直前のYIVOの組織構造、所蔵文書の内容、博物館、図書館の状態を理解するのにきわめて重要である。これらの史料はまた、当時、YIVOが公式には閉館されなかったものの、新統治者〔ソ連〕のもとで停滞し、その間、積極的な展開をわずかにしか遂げなかったことを示している。
これらの史料は完全にアクセス可能ではあったが、国外の研究者によってめったに利用されてこなかった。言語の障壁はさることながら、地域的な障壁もその理由である。すなわち、リトアニアのソヴィエト化についての研究においては、通例、ユダヤ人の研究所の運命は議論されず、その関心はもっぱらリトアニア人やリトアニア人の研究所に置かれていたのである。
 近年、このような史料がリトアニア国立図書館のジュダイカ・コレクションにおいて発見されている。これらは実に数十年の間知られておらず、YIVOの史料集積にかなりの付け加えをなすものである。

Lara Lempert, “The Last Chapter: YIVO in the Years of the First Soviet Occupation of Lithuania (1940-1941)”
Summary:
The history of the YIVO Institute established in Vilnius in 1925 and now continuing its activities in New York as YIVO Institute for Jewish Research, as well as the fate of its collections, has been discussed in many articles, book chapters, memoirs, encyclopaedias and, most recently, several monographs. However, the subject is far from exhausted, and not only because of the vastness of the cultural achievement of YIVO, but also because new documents pertinent to YIVO are continuously being discovered or come to the fore. Speaking of the former group, several thousands of pages of YIVO-related materials were recently rediscovered in several institutions in Vilnius. In this presentation, however, I will focus on documents that were accessible for years, but not sufficiently presented in the scholarship, although they would substantially add to our knowledge of YIVO. The documents that are mostly in Lithuanian and preserved mainly in the Lithuanian National State Archives, are related to the YIVO Institute in 1940 and 1941 – the year when Vilnius came under the Soviet jurisdiction. They are extremely important, supplying the last glimpse on the state of the YIVO structure, the content of its archival collections, the museums and the library immediately before the Nazi occupation and the plundering and looting that accompanied it. At the same time, these documents demonstrate how, although not closed officially, the institute stagnated under the new regime, and only a couple of positive developments happened during this period.
Even though these documents have been fully accessible, foreign researchers seldom use them because of the linguistic obstacle, and the local ones – because in their research of sovietisation of Lithuania they are usually not engaged in discussing the fate of Jewish institutions, being predominantly concerned by the Lithuanian ones and the Lithuanians.
Recently, more of such documents were found in the Judaica collection of the Lithuanian National Library. These were, indeed, not known for decades and make a substantial addition to this corpus.

JSJS symposium commemorating centenary of YIVO
In partnership with:
Martynas Mažvydas National Library of Lithuania, Lithuanian Culture Institute, Embassy of Lithuania in Japan
October 4, 2025, Sat. 13:00~17:00 at Kagura Zaka Campus, Tokyo University of Science.

Aims and scope:
YIVO Institute for Jewish Research, established in Vilnius in 1925 (Wilno in Poland at that time) and now located in New York, is a research institute on East European Jewish civilization holding the largest collection of materials on it. Collections in YIVO’s archives and library are multilingual encompassing not only Yiddish and Hebrew but also languages used in the countries where Jewish communities were/are.
This symposium, celebrating the centenary of YIVO, traces its history from the beginning through the most critical period of WWII to the contemporary era. It also reconsiders the possibility of YIVO to expand the research scope to include regional studies beyond just Jewish studies. Dr. Lara Lempertienė, invited as a special guest from Judaica Research Center, Department of Documentary Heritage at Martynas Mažvydas National Library of Lithuania in Vilnius, will talk on a less known chapter of YIVO in the local Lithuanian historical context.
We welcome both researchers on Jewish studies and those who are interested in countries that YIVO’s collection relates to.
We express our deepest gratitude for cooperation of Embassy of Lithuania in Japan in inviting Dr. Lara Lempertienė.

13:00–13:05 Opening remarks by Hiroshi Ichikawa(President of JSJS)
13:05–13:35 Yuu Nishimura(Lecturer at Nagoya University of Foreign Studies)
“The early history of YIVO and its achievement: from the beginning to 1939”  
13:35–14:35 Lara Lempertienė (Judaica Research Center, Department of Documentary Heritage at Martynas Mažvydas National Library of Lithuania in Vilnius)
Special Lecture:“The Last Chapter: YIVO in the Years of the First Soviet Occupation of Lithuania (1940-1941)”
14:35–14:45 Short break
14:45–15:15 Takao Chizuko (Former Prof. of Tokyo Medical and Dental University)
“YIVO in New York and its documents on Soviet Jewry”
15:15–16:00 Comments by Hisashi Shigematsu (Research Fellow-CPD, JSPS. Partnership Associate Professor, Vytautas Magnus University), Ryoka Aoki (JSJS), and Keishi Arai (JSJS/Dr.) 
16:00–16:15 Short break
16:15–17:00 General discussion

2025年度総会

2025年度日本ユダヤ学会総会を全面オンラインで開催いたします。
※例年はシンポジウムと同日開催ですが、今年度のシンポジウムは秋に開催予定のため総会のみのご案内となります。
日時:2025年7月5日(土)15:00~16:00
会場:zoom
※zoomのURLは会員のみなさまに送付しております。

Aviad Moreno氏講演会(2025年2月10日)

ベネズエラやフランス、カナダ、スペイン、イスラエルなどを行き来するスペイン語系のモロッコ・ユダヤ人ディアスポラについて昨年ご著書を上梓されたAviad Moreno氏(イスラエルのベングリオン大学)が来日されるに際し、以下の通りインタビュー形式の講演会を開催することになりました。
イスラエル/パレスチナの文化研究・ヘブライ語文学がご専門の細田和江氏にコメンテーターを務めていただきます。
どなたでもお気軽にご参加ください。

Aviad Moreno氏講演会
講演題目:A Conversation with the Author on Multilayered Jewish and Middle Eastern and North African Migrations

コメンテーター:細田和江(東京外国語大学)
モデレーター・インタビュアー:鶴見太郎(東京大学)

使用言語:英語
日時:2025年2月10日(月) 13:30-15:00
場所:東京大学駒場キャンパス18号館*4階コラボレーションルーム4

Aviad Moreno氏プロフィール:
ネゲブ・ベングリオン大学イスラエル・シオニズム研究所上級講師。博士(ベングリオン大学)。
モロッコを中心とした中東・北アフリカのユダヤ人やその移民が専門。
著書に、Entwined Homelands, Empowered Diasporas: Hispanic Moroccan Jews and Their Globalizing Community, Indiana University Press, 2024.

申込不要・対面のみ

主催・連絡先:鶴見研究室(東京大学大学院総合文化研究科)taro_tsurumi(アットマーク)yahoo.co.jp
共催:日本ユダヤ学会
*18号館は、駒場キャンパス正門から入って正面にある時計台の建物(改修中)の向こう側に見える一番背の高い白い建物です。それを目標にして、銀杏並木を横切り、建物を2つ抜けると現れます。

『ユダヤ・イスラエル研究』第39号の投稿申し込みを受け付けます

会誌『ユダヤ・イスラエル研究』第39号への投稿を募集いたします。
ご希望の方は2024年12月末までに志田雅宏宛てにメールをお送りください。
masahiroshida222(アットマーク)gmail.com
件名に「論文」等の種別と仮題を記載してください。
編集委員会にて申し込みを受理した後、詳しい投稿規定をお送りいたします。

原稿の種別と基本的な枚数(注と図表を含む。400字詰換算)は下記のとおりです。
論文:50枚
研究ノート、学会動向、旅行記など:30枚
書評:10~20枚
新刊紹介:4枚以内
*書評と新刊紹介については、編集委員会の方から執筆を依頼する場合がございます。
*2024年度のシンポジウム論文の執筆は7月に別途依頼しております。依頼を受諾してくださった方々も、上記の原稿の投稿が可能です。

第39号は2025年3月末原稿締切、2025年12月刊行の予定です。
なお、掲載された論文は学術論文データベース(J-Stage)で公開の予定ですので、ご了承ください。
原稿の採否については査読のうえ編集委員会で決定させていただきます。

第21回学術大会開催のお知らせ

下記のプログラムに基づき、対面形式(東京大学本郷キャンパス)で開催されているものをZoomでもライブ配信するハイブリッド形式で学術大会を開催いたします。

日時:2024年10月26日(土) 10:25~17:30 
場所:東京大学本郷キャンパス法文1号館113教室
〒113-0033 東京都文京区本郷7丁目3−1(場所は下記のリンクからご確認ください)
https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_01_01_j.html

非会員の方でオンライン参加を希望される場合は、事前申し込みが必要です。
申込は下記のフォームからお願いいたします。10月24日(木)が締切です。
第21回学術大会オンライン参加用申込フォーム(非会員の方のみ)
*対面参加を希望される場合は、事前申し込みは不要です。

プログラム

10:25 開会のあいさつ

10:30~11:15 嶋田英晴(同志社大学)
ユダヤの商業ネットワークと『ラシュート(管轄)』の関わり~ブンダール家の事例から~

ゲニザ文書の書簡と先行研究から、12世紀前半の地中海とインド洋で活動するユダヤ商人達とネットワークを有していた、アデンを拠点とした豪商ブンダール家を中心に、バビロニアのレシュ・ガルータ(捕囚民の長)、エジプトにおけるパレスチナ系イェシヴァのガオン、そしてエジプトのナギッド(ユダヤの長)との関りを明らかにする。これによりユダヤの商業ネットワークとラシュートの関わりについて具体的に解明する。
(※研究発表は発表30分+質疑応答15分。以下同)

11:20~12:05 蓼沼理絵子
R.Bahyaの「食卓」-パンの祝福と世界の秩序

サラゴサのR.Bahya ben Asher(1255-1340)の『シュルハン・シェル・アルバ(四脚の食卓)』は、その名のとおり「食」から道徳と倫理を説く。荒れ野に降ったマナや過越し祭のマツァを含め、パンはすべての食事と生活の基本であり、卓上の食事と作法は世界の秩序を表す。ゆえに、定められた食事は正しい知識の摂取であり、救済の約束につながる。このパンの祝福と表象から、R.Bahyaの説く「食卓」とその世界観を考察する。

12:05~13:30 休憩

13:30~14:15 大澤耕史(中京大学)
ヘブライ語聖書から新約聖書までの呼称とその実体:「ユダヤ人」とその周辺

ヘブライ語聖書の中で「ユダヤ人」を示す言葉は複数存在する(ユダヤ人、ヘブライ人、イスラエルの民等)。本報告ではそれらの呼称と実体を踏まえた上で、聖書外典偽典を経て新約聖書に至るまでの間に、それらの呼称と実体がどのように変化したかを明らかにすることを試みる。特に、話者/著者がキリスト教徒に変わるに際し、神との契約の正統性をめぐる争いの中での変遷に着目したい。

14:20~15:05 李美奈(東京大学大学院)
17世紀理性主義者に対する反駁に見る、モデナの儀礼と法に関する思想

発表者はレオネ・モデナ(1571-1648)『ヘブライ人の儀礼の歴史』(1638)の歴史的な影響力を鑑み、モデナのユダヤ法や儀礼に関する思想を研究している。本発表ではハンブルクのウリエル・ダ・コスタがヴェネツィアのラビに当てた質問状に対するモデナのレスポンサ『盾と大楯』(1616)を用いて、口伝トーラーや戒律の実践に関するダ・コスタとモデナの見解の違いを分析し、モデナのユダヤ法に対する思想を明らかにすることを試みる。

15:10~15:55 加藤哲平(九州大学)
ラビ・オカモト:日本人最初のラビの生涯と思想

本発表は、ラビ・オカモトこと岡本宏(おかもと・ひろし、1926-1981)の生涯と思想を、現存する資料から明らかにするものである。岡本は、戦時中は帝国海軍兵学校にて訓練を受けた軍人であったが、戦後日本の思想的混乱に抗するかのように、永遠の真理をユダヤ教に求めた。米国ヒブル・ユニオン・カレッジにてラビの資格を取得した岡本は、ラビとしての活動の傍ら、英国および米国で、タルグムの研究や比較宗教の教育にも従事した。本発表は、この「日本人最初のラビ」に関する最初の報告である。

15:55~16:15 休憩

16:15~17:30 講演:Jonatan Meir(Ben Gurion University of the Negev)
Historiography, Hasidism, and Forgery: The Case of the Kherson Geniza (On the Historiography of Habad and the Early Hasidic Movement)

In 1918, with the end of the First World War, rumours spread that a huge collection of original writings by the founder of Hasidism, Israel Baal Shem Tov, his disciples, and their followers had been discovered in Kherson. This was major news, as very few known texts by him exist—only a few letters. What prevents modern scholars from uncovering the mystery of these texts’ authenticity? Why are Hasidim still not ready to present these documents to the wider public? What is the significance of these letters in the history of Hasidism?
The lecture aims to highlight the uniqueness of Habad historiography as a case study of historical document forgery, the reinforcement of internal Hasidic consciousness, and the attempts to create a Hasidic modern literary channel in response to the secular neo-Hasidic literature of the early 20th century.
(※本講演はヘブライ語でおこなわれます。英文要旨が付きます)

講演者紹介
Jonatan Meir is a full Professor in the Goldstein-Goren Department of Jewish Thought at Ben-Gurion University of the Negev, and a Member of the Israel Academy of Sciences and Humanities. He serves as a JSPS fellow for 2024-2025 at the University of Tokyo.
Meir has composed seven monographs, edited various anthologies, produced several critical editions, and published over 100 articles. Among the books he has written or edited are included –Imagined Hasidism: The Anti-Hasidic Writings of Joseph Perl (Mossad Bialik, 2014); Joseph Perl, Sefer Megale Temirin, annotated edition in 2 volumes (Mossad Bialik, 2014); Kabbalistic Circles in Jerusalem, 1896-1948 (Brill, Aries Book Series, 2016); Literary Hasidism: The Life and Works of Michael Levi Rodkinson (Syracuse University Press, 2016); Habad Hasidism: History, Theology and Image (Zalman Shazar Press, 2016); Gershom Scholem, History of the Sabbatian Movement (Schocken, 2018); Gershom Scholem and the Research of Sabbatianism (Schocken Institute, 2021); Three Lectures on Bratslav Hasidism, Schocken Institute 2024); Three Lectures on Habad Hasidism (Schocken Institute 2024); Wrestling with the Esoteric: Three Lectures on Yehuda Leib Ashlag and 20th Century Kabbalah (Schocken Institute 2024)

日本ユダヤ学会編『ユダヤ文化事典』が刊行されました

日本ユダヤ学会編、市川裕(編集代表)
『ユダヤ文化事典』
丸善出版、2024年7月

【内容紹介】
 ユダヤ教は、啓示(超越的な神)がこの世の人間たちに対して現れるという現象を基盤とする一神教であり、ユダヤ民族の民族宗教である。その宗教の独自性ゆえに周囲の異邦人により常に差別され迫害される危険にさらされたが、宗教による絆によって結ばれた一つの民として独自の存在を保持してきた。
 本事典は、近現代のユダヤ(宗教および人)の文化に焦点をあてている。古代から現代まで、領土をもたず、世界中に集団が広がりながらも、ユダヤ教という宗教によってのみ相互の絆を守り、一つの民として独自の存在を保持・生き抜いてきたユダヤ人の文化の営みを網羅的に把握することを目指した。
 ユダヤ教の概念から民族の歴史、世界各地での様相、経済・文化的活動、日本との関わりなど、全16章304項目を執筆者156名による書下ろしで解説。

目次および詳細は下記の丸善出版のウェブサイトにてご確認ください。
https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/b306003.html